車両の診断や整備の現場では、スキャンツール(OBD診断機)が頻繁に使われます。しかし、同じくOBDポートを使用するGeotab GOデバイスが接続されている状態でスキャンツールが使用された場合、両者の通信が競合する可能性があります。
GeotabのGOデバイスは、このような状況において安全性と通信の整合性を保つための特別な動作モードを備えています。今回は、スキャンツールが接続された際にGOデバイスがどのように動作するかについて解説します。
スキャンツールを検出するとGOデバイスは「バッキングオフ」状態に入る
スキャンツールの通信がGOデバイスによって検出されると、デバイスはすぐにバッキングオフ(back-off)モードに移行します。このモードでは、GOデバイスから車両ネットワークへのすべての内部生成リクエストの送信が停止されます。これにより、スキャンツールの診断操作を妨げないよう配慮されています。
イグニッション検出が「2線トリップトラッキングモード」に切り替わる
バッキングオフ中でも、GOデバイスは完全には機能を停止しません。
- イグニッション(キーON/OFF)の検出方式が2線トリップトラッキングモードに切り替わります。
- これは、デバイスがすぐにスリープモードに入らないようにするための措置です。
- スリープに移行する条件を正しく検出するために、最低限の通信を維持します。
通常の動作に戻る条件
GOデバイスが再び車両ネットワークへのアクセスを許可するには、以下の2つの条件を同時に満たす必要があります。
条件1:スキャンツール通信が10分間検出されない
- OBD通信や、その他スキャンツールによるプロプライエタリなリクエストを含みます。
- この10分間のタイマーは絶対時間であり、GOデバイスが起動していても、スリープ中でもカウントされ続けます。
- スキャンツールのメッセージが再度検出されるたびに、このタイマーはリセットされ、さらに10分間延長されます。
条件2:GOデバイスがスリープに入る
- 通常、車両の完全なシャットダウン(キーOFF)後にGOデバイスはスリープモードに入ります。
- 上記の「2線モード」により、このスリープ移行が適切に判断されます。
この2つの条件が満たされた時点で、GOデバイスは通常の通信を再開し、診断や運転データの取得が再び可能になります。
まとめ
スキャンツールの使用中は、Geotab GOデバイスは自動的に通信を制限し、競合を回避するための安全設計が施されています。
- スキャンツール通信が検出されると、デバイスは車両ネットワークから退避(back-off)
- スリープを防ぐために2線モードへ移行
- 通常モードへ復帰するには、10分間スキャンツール通信がない + GOがスリープに入る の両方が必要
この仕組みにより、整備時の診断業務を妨げず、かつフリート運用への影響を最小限にとどめることができます。GOデバイスを装着している車両にスキャンツールを接続する際には、こうした仕様を理解した上でご対応ください。